作家の独自の文体は知的財産になるのか?
アイデアを頑張ってものにしようと思っても、それが特許に認められるかどうかってことも不確実ですし、そのあとに裁判になったりとかするかもしれないじゃないですか。
そういう可能性もありますよね。
そうですね。
特許制度ができる前権力者や金持ちは発明家を直接雇ったり、懸賞金をかけたりすることで発明・発見を促していました。
古代ギリシャのある支配者は学者アルキメデスを雇い、王冠が純金製かどうか調べるよう命じました。
「アルキメデスの原理」はこうして発見されたのです。
やがて…、発明家に独占権を与える条例が制定されました。
その後特許制度が世界に普及していくにつれ、電話白熱電球無線通信機など、激しい特許権争いが繰り返されます。
特許制度は必ずしもうまく機能しないことがありました。
有名なライト兄弟は飛行機に関する特許の取得や法的な訴訟に、明け暮れその後の開発にはあまり力を注ぎませんでした。
そのためアメリカの飛行機産業は海外に後れを取ったと、言われています。
スペシャル対談。
後半戦は「作家の独自の文体は知的財産になるのか?」という、お話からです。
町田さんってすごい独特な文体を書かれる作家さんだと思いますが、その文体自体に特許みたいなものは必要だと思いますか?
いや無理でしょうね。
あんまり意味ないと思います。
文体ってわりとそんなにパッと分かるもんでもないと思いますね。
もうちょっと微妙なもんだと思うんですよね。
僕だって例えば野坂昭如さんの文体に似てるって、言われたこともあるしもっと更にその前の織田作之助に、似てるって言われたこともあるしそれが特許で全部止めちゃったら、文化も先行き真っ暗じゃないですか。
「金払え!」みたいにいちいち言ってたら、やるやついなくなってしまいますよね。
…そういうときはどういうふうに感じられてますか?
そういうことをうれしいと思うタイプの人と、なんか俺を脅かすやつは潰してやるみたいな人と、両方いると思うんです。
僕はわりとうれしいタイプで。
ただものによるって言うか。
それがだから別の新しい作品になってたりとか、全然別の面白いものになってればいいし、全然別の面白いものにしようとした痕跡があればいいんですが、その痕跡がないとちょっと…。
なってなくてもいいんですけど。
苦労して生み出されたからこそまねするにしても、大切に扱ってほしいという気持ちもありますか?
まねっていうか読んで影響されるのは当たり前ですから。
たぶん読者がチェックすると思うんですよねまず第一に。
「これまねやんけ」と思うのか「おもろいやんけ」と思うのかは、その人の力量にかかってくるんじゃないですかね。
僕とかで例えば自分と全く同じコントの設定とかをやってる、後輩がいたとしたら「これは平凡やったんやな」と思って、「じゃやめようか」ってなる事も。
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